郷センセ:
今日も生徒は凡太か。
不定詞を2回続けてやってきたけれど、今日もまた不定詞だ。しつこい、とか思うなよ。
今日は簡単なのとやっかいなのをやる。
どっちが先がいい?

簡単なほうから……がいいです。
だよな~。
じゃあ、簡単なほうからな。
不定詞の形容詞的用法、ってやつだ。これは簡単だよ。
名詞の後ろに不定詞をくっつけて、「~する(ための)…」という意味で、前の名詞を修飾するというやつだ。名詞を修飾しているから「形容詞的用法」ってわけだ。
I want to eat something.
(俺は何か食いたい)
……っていうのは最初にやったよな。want to~ で、「~したい」だったね。で、強いていえばこの不定詞 to eat は want という動詞の目的語のような働きをしているといえるから「名詞的用法」だ、なんて話をしたよな。
この文の語順をちょっと変えて、
I want something to eat.
ってやると、これも正しい文なんだ。どういう構造か考えてみようか。
この文は5文型でいうとどれだ?

主語は I で、want が動詞で、want の目的語が something ……ですか?
そだね~。だから……?

SVO ……です。
そだね~。
後ろの to eat を取っ払ってしまうと、
I want something.
で「俺(I)は何か(something)が欲しい(want)」っていう SVO の文だ。
その目的語(O)である something を、後ろについた to eat が修飾しているんだな。
「食べるための→何か」という風に。
something という名詞を修飾しているから、形容詞の働きだね。これが形容詞的用法の不定詞だ。
チョー簡単だべ。
some books to read(読むべき何冊かの本)
a new house to live in(住むための新しい家)
こういう使い方だと、修飾される名詞は後ろの不定詞にとっては目的語の関係で、不定詞の意味は「~するための」「~すべき」みたいな感じになる。
ただ、常にこのパターンではないのよね。
Don't you know someone to fix this machine?
(誰かこの機械を直せる人を知らないか?)
……みたいな文では、someone(誰か)は to fix(修理する)に対しては意味上の主語の関係になる。
でもまあ、そんなことは文の内容を考えればおのずと分かることだよな。
というわけで、形容詞的用法の不定詞は何も難しくない。
OK?

I hope so.
お、生意気なフレーズ覚えてきたな。えーぞえーぞ。エゾはほっかいど~。

……??……
29-2 疑問詞+不定詞
じゃあ、ここからはお待ちかねの、ちとややこしい話だ。
3回もやってきたから、もう薄々感じていると思うけど、不定詞ってのは「不定」っていうくらいで、使い方がパシッと決まってない、というか、いろんな姿を見せるのよね。
名詞にもなる形容詞にもなる副詞にもなる。さらには決まった言い方がいろいろあって、そういうのはいちいち構造分析みたいなことをしているより、フレーズとして覚えてしまったほうがいい……みたいな、ね。
というわけで、ここからは今まで説明してきたことから漏れてしまった不定詞の使い方の中から、これはやっぱり大切だから説明しておいたほうがいいかな、というのをいくつか並べていくよ。
OK?

なんか怖いっす。
怖くない怖くない。
まずは、簡単なやつから。
疑問詞+不定詞 だ。
これは形容詞的用法の不定詞に似ている。
- what to~ 「何を~すればいいか」
- which to~ 「どれを~すればいいか」
- when to~ 「いつ~すればいいか」
- where to~ 「どこで~すればいいか」
- how to~ 「どう~すればいいか」=「~のやり方」
疑問詞+不定詞で「~すべきか」「~すればいいのか」という意味の「名詞句」になる。
I don't know
what to do next.
(次に
何をしたらいいか分からない)
I don't know
when to leave.
(
いつ出発したらいいか分からない)
I don't know
what color to paint.
(
何色を塗ったらいいか分からない)
……こんな感じ。簡単だろ?

いつも I don't know の後ろにくるんですか?
んなわけないだろが。
I know ~ だったら「~すべきか俺は知っている」だし、Tell me ~ なら「~すべきか教えてくれ」ってことだろが。
そもそも「疑問詞+不定詞」でひとかたまりの名詞句なんだから、目的語だけじゃなくて、文の主語にも補語にもなるよ。
When to leave is up to you.
(いつ出発するかはきみ次第だ)
↑これは文の主語になった例だな。
※ be up to ~(~にかかっている、~次第だ)
というわけで、疑問詞+不定詞も簡単、ってことでOK?

……はい。
29-3 be動詞+不定詞
be動詞の後にいきなり不定詞がつくという用法もある。これは感覚的には馴染みにくいかもしれないけれど、ザックリいえば、未来のことを指して「~することになっている」みたいなイメージかな。
(今はそうなってないけれど)「~そうなるべき」「~そうあってほしい」「~そうすることに決めてある」みたいな感じ。
これを、文法解説書なんかでは、義務、予定、期待、運命、期待、可能、意図……なんて解説しているけど、別にそんなの覚えなくても、イメージが摑めていればいいのよ。
例えば、こんなのがあるよ。
Don't you want to have meal, Pochi? You are to come down from the roof.
(ポチ、ご飯いらないの? 屋根から降りてきなさい。) =期待、義務 ⇒ should
The next Olympic Game is to be held in Paris in 2024.
(次のオリンピックは2024年、パリで開かれることになっている。) =予定 ⇒will
We're to finish the work before dark.
(我々は日没前にその仕事を終えなければならない。) =義務 ⇒must、have to
※未来のことをいっているけれど、finish the work という内容からして「そう期待されている」⇒「しなければならない」というニュアンスが強くなる。
……とまあ、こんな感じ。どれも助動詞的な働きだよね。be動詞の後についてるから、この不定詞は「補語」だと解説している文法書もあるけど、補語かどうかなんてどうでもよくて、「be動詞+不定詞は助動詞的な働きをして、今実現していないことに対する期待や予定、義務などを表す」という風に理解したほうがずっといい。
分かるか?

うわ~ん、泣きそうっす……。
29-4 SVOCのCが不定詞
泣くのは後にしてちょ。
be動詞+不定詞は、自分では使いこなそうとしなくてもいいよ。自分で文を作るとき(英作文とか英文メールを書くときとか)は、can とか will とかの使い慣れた助動詞を使えばいい。ただ、こういう文にでくわしたときに意味が取れないと困るから、知っておく必要はあるな。
さて、どんどん行っちゃうよ。
次もちょっとややこしいかもしれないけど、ものすごく重要だからしっかり理解してくれよ。
SVOC の C(補語)に不定詞がくる、というやつだ。
I want to go there.
という文はどういう意味になる?

「私はそこへ行きたい」です。
そだね~。じゃあ、
I want you to go there.
だと、どういう意味になる?

アイウォンチュー?? きみが欲しい……?
おいおい。女くどいてるんじゃないっつ~の。
これはね、
I want you to go there.
S V O C
で、SVOCの文になっている。意味は、
「私はあなたにそこへ行ってほしい」
……だ。
I want you.
だけだとただの SVO で、「おまえが欲しい」っていう、女を口説く台詞になっちゃうけど、この you は次に続く to go~ の意味上の主語になってる。
want +目的語+不定詞 で、
「…に~してほしい」という意味。これはもう、「want+人+不定詞」という構文として覚えてしまったほうが早いな。
他にこの文型を作る動詞としては、こんなのがあるよ。
like … to~:…に~してほしい(~であることを望む)
I don't like you to say so.
(きみにはそう言ってほしくない)
tell … to~:…に~するように言う
I told him not to stay home.
(私は彼に家にいないようにと言った)
※不定詞の否定形は not to ~
ask … to~:…に~するよう頼む
She asked all of us to stay home.
(彼女は私たち全員に家にいるようにと頼んだ)
allow … to~:…に~することを許す
Mother doesn't allow me to use this knife.
(お袋は俺にこのナイフを使うことを許してくれない)
force … to~:…に(強制的に)~させる
He forced us to go out.
(彼は我々を無理矢理外に出した)
promise … to~:…に~することを約束する
I can't promise you to forgive him.
(彼を許すと約束するなんてできない)
これも、文例に多く接して慣れることが必要だな。
で、ここまできたらもう一つ……。

ひょえ~。まだあるんすか?
この「…に~するように○○する」という言い方の to~ の部分が
原形になるというのがあるのよ。
You make me
feel happy.
(きみは僕を幸せにしてくれる)
とか、
Let me
go.
(行かせてくれ)
なんてのがそう。
こういうのを to がつかない不定詞ってことで「原形不定詞」なんて呼んだりもするんだけど、そんな文法用語はどうでもいい。
目的語+to~ なのか 目的語+動詞の原形 なのかは、使う動詞によって決まる。
これも覚えるしかないのよ。
原形がくる動詞としては、make と let が代表格かな。この2つは絶対に使えるようにしておかないとダメだ。
He made me go there.
(彼が俺をそこに行かせた)
Please let me be free.
(頼むから自由にさせてくれ)
昔のヒット曲で、
♪ YOU MAKE ME FEEL BRAND NEW っていうのがあったなあ。
brand new っていうのは、ピカピカの新品、真新しい、っていうような意味。
直訳すれば「きみはぼくに真新しい気持ちにさせてくれる」⇒「きみのおかげでぼくは生まれ変わったようだ」みたいなことだね。
そういうラブソング。大ヒットしたんだけど、まあ、例によって凡太は知らないよねえ。
もっと有名なので、ビートルズの
♪ LET IT BE という曲があるけど、あれも補語が動詞の原形(be)になっているSVOCだね。
「それ(it)をそのままにしておけ」「ありのままでいい」「なるがままにしておけばいい」というような意味。
be の後になにかくっつけると、いろんな意味の文になるね。
Let it be a lesson to you.
(それをあなたの教訓にしなさい)
You can let it be my fault.
(それは俺のせいってことにしていいよ)
※fault:失敗、間違い 「you は、it を my fault にする(let) ことが できる(can)」という文の構造
……こんな風に、単純な文型なんだけど、英語的な表現の中にいっぱい出てくる。日本人にとってはこういうのがいちばん難しいのかもしれないねえ。
SVOC というのは、すごく奥が深い。Cには形容詞や名詞の他に、動詞の原形、to~不定詞、現在分詞、過去分詞……いろいろくる。
I want my shirt
cleaned.
(シャツを
きれいにしてほしい) 補語=
過去分詞
I heard Hanako
call Pochi.
(ハナコがポチの名を
呼ぶのを聞いた) 補語=
動詞の原形
I saw him
waving his hand.
(彼が手を
振っているのを見た) 補語=
現在分詞
I found it
interesting to watch tennis games.
(テニスの試合を観るのは
面白いのだと分かった) 補語=
形容詞
I had my hair
cut.
(髪を
切ってもらった) 補語=
過去分詞
※ cut に対して hair は「切られる」という受け身の関係=過去分詞に
I had my mother cut my hair.
(母に髪を切ってもらった) 補語=動詞の原形
※cut に対して my mother は主語の関係=原形に
※make よりも have のほうが「~してもらう」というニュアンスが出る。
……とまあ、いろいろあるのよ。
焦らず、少しずつ自分のものにしていくしかないね。
不定詞って、そういうものなんだな。「慣れる」しかない。
ほんじゃ、今回も長くなっちまったから、今日はここまでにしておくよ。
ちゃんと
練習問題やれよ。

……はい……
今日のポイント
- 名詞の後に不定詞がつくと、不定詞が前の名詞を説明(修飾)する働きをする。これを「形容詞的用法の不定詞」という。
- 不定詞の働きや用法は多岐に渡るので、代表的な例文を覚えて「慣れる」ことが大切。
- 特に SVOC のCに不定詞がくる文は、その文型を作る動詞を覚えておくことが必要。不定詞がくる場合、動詞の原形がくる場合、現在分詞がくる場合、過去分詞がくる場合など、いろいろあるので、それぞれの文の動詞が何か、SVOC の O と C がどういう関係かに注意する。