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30. 冠詞と代名詞


郷センセ郷センセ:  今日も生徒は凡太か。
さてと、枝葉の話もどんどん細かいところに進んでいくよ。
今日は冠詞と代名詞の使い分けというのを、改めて考えてみようか。
どちらも今まではサラッと使ってきたけれど、どう使い分けているのかってことについては、あまり詳しい説明はしてこなかった。幹の部分ができる前に葉っぱの話にこだわっても仕方がないと思ったからだ。
でも、凡太ももうだいぶ英語の世界が見えてきただろうから、今なら細かいニュアンスの話も通じるかもしれないからね。
I hope so. OK?
凡太 ……はい……

じゃあ、まずは冠詞ってやつについて話をしよう。
端的に言えば、 a と the の話だ。冠詞ってのはこの2つしかない。
よく「a、an、the の3つある」と解説しているのを見るけど、an というのは、母音で始まる名詞の前に a をつけたときに発音しにくいから、an にしただけで、a と同じものだ。the も、母音で始まる語の前では発音が変わる(ザ→ジ)から、同じこと。

an apple / a sour apple
(りんご) (酸っぱいりんご)

an hour / a Utopia
(1時間) (理想郷)
※ hour の h は発音しないから、hour は母音で始まる語。Utopia(ユートピア)は y の音(子音)で始まるから an にはならない。



で、a は、数えられる名詞が1つ(1人)であるときにつけるわけだけど、数を表していると同時に、特定されていないものであるということを表しているんだな。
ただ、一度話題に上った「1つ」について次にいう場合は、それはもう「特定されたもの」ということになって、the がつく。

I found a ball on the ground.
(地面の上にボールが1つ落ちているのを見つけた)

The ball was red.
そのボールは赤かった)

the はそうした「特定のもの」につくだけでなく、物質(the water、the air)や自然界の一般的なもの(the sky、the ground、the sea)なんかには the をつけることが多いね。
他にも、電車の路線名(the Yamanote line:山手線)とか、○○時代(the Edo Period:江戸時代)とか、いろいろ特殊な使い方もあるけれど、まあ、そういうのは出てきたときに「へえ~、そうなのか」って覚えていけばいい。

それよりも、冠詞の使い分けと一緒に、代名詞の使い分けも覚えたほうがいい。使い分けのコツというか、考え方が似ているからだ。前にもちょろっと教えたけれど、今日はじっくり教えるよ。

↑さっきの「ボールが1つ……」という例文では、2番目の文の the ball(そのボール)は、ball という語を繰り返さず、代名詞で受けられるね。どんな代名詞を使う?
凡太 it ですか?

そだね~。すでに話に出ている「(とある1つの)ボール」だから「それ」といえばいいわけで、it だね。

I found a ball on the ground.
(地面の上にボールが1つ落ちているのを見つけた)

It was red.
(それは赤かった)

じゃあ、落ちていたボールが1つではなくて複数個あったらどうだろうか。

There were balls on the ground.
というとき。
特定されていないものが複数ある場合は冠詞なしでただの複数形でいい。
ただし、「いくつかの」というような意味で some balls ということはある。

There were some balls on the ground.

で、「そのうちの1つは赤かった」
を英語にするとどうなる?

凡太 A ball of them was red.
ですか?

間違いではないけど、いちいち ball という語を繰り返すとダサいだろ? 代名詞でいうと?
凡太 え~と……it of them ……とはいわないですよね?

いわないねえ。絶対いわない。
one of them だ。
「そのうちの1つ」といっている時点では、まだ特定されたボールとはいえないからね。
不特定のもの「ひとつ」をさす代名詞は one でいい。
だから、
One of them was red.
だ。

じゃあ、次。
「それは他のボールより少し大きかった」
というにはどうする?
凡太 今度は it で受けていいんですよね。
It was bigger than ....
うん。it を使ったところまではOKだ。「1つは赤かった」といった時点で、その赤いボールが特定されたから、次に「それは」といえるわけだね。
「A は B より大きい」は、
A is bigger than B.
だね。「少し大きい」という場合、形容詞の前に a little をつけてやればいい。だから、
It was a little bigger than (他のボール).
となるわけだけど、「他のボール」をなんていえばいいか、だな。
これは others でいい。
「他の~」は other ~ だけど、不特定の「その他のもの」others といえる。


だから?
凡太 It was a little bigger than others.

そだね~。
じゃあ次に、この one と other ~ の関係の one を複数にして、
「いくつかは~、その他の……は~」という場合はどうするかを考えてみようか。
不特定のものをさす one(単数) に対して、それが複数なら some(複数) という代名詞を使うんだ。

There were balls on the ground.
Some were red and others were blue.
何個かは赤くて、その他は青かった)

……っていうことだな。
で、one の複数形が ones ってことだ。

I picked up some blue ones.
(私は青いボールをいくつか拾い上げた)

ここまでいいかな?
凡太 難しすぎます~。シクシク。

泣くな。
一度で理解できないのは当然だ。何度でも読み直せ。
で、それを待っていられないから、次にいくぞ。

今度は、
There were two balls on the ground.
って状況を考えてみよう。最初に「2つ」といったわけだ。
もちろん two balls に the なんかつかないよ。There is ~.の文の主語に the とか my とかつくことはない。「~がある」と最初にいうときは、不特定の人や物だからだね。

で、「(その2つのうちの)1つは赤かった」ならどういう?
凡太 やっぱり、one ですよね。
One was red.

そだね~。
この場合も、「その2つのうちの1つ」っていった時点では、まだ特定できてない(どっちか分からない)から one でいい。
じゃあ、
もう1つのほう(もう一方)は青かった」
はどういえばいいかな?
凡太 「もう1つ」……残りは1つしかないから、others じゃないですよね。複数形にはならないし。ただの other ですか?
Other was blue.

ざんね~ん。
最初に「2つあった」といってて、そのうちの1つが赤かった、といった後の話だから、「もう1つ」のほうは、もうそこに残っている1つ「しか」ない。つまり、これはもう特定されているわけなのよ。
だから、the をつけて、
the other というんだな。

The other was blue.

が正解。
凡太 う~~ん。

じゃあ、
「このボールは気に入らない。他のを(1つ)くれ」
っていうのはどういえばいいかな?
凡太 「他の」だから、other ですよね。
Give me the other.
ですか?

惜しい~。
「他のを1つ」っていうのは、いくつかある中から不特定の1つだよね。だからこれは the other じゃなくて、a をつけるんだな。
a+other なんだけど、other は母音で始まる語だから、a は an ってなるね。だから an other……これは1語で another っていう。
だから、
Give me another (one).
が正解。


……とまあ、a と the の使い分けは比較的分かりやすいんだけど、one とか other とか some とかっていう代名詞の使い分けのほうが分かりづらいね。そもそも冠詞も複数形も日本語にはない概念だからね。

こういうのは枝葉のことに属するけど、幹の部分以上に難しいかもしれないねえ。

ほんじゃ、今日はここまでにしておくよ。
一応練習問題も作っておくか。ふうう……。





今日のポイント


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