郷センセ:
今日も生徒は凡太か。
まずは復習からだ。
「ハナコはそれをしなければいけない」を英語でいうと?

Hanako must do it.
……です。
そだね~。「~しなければならない」という「義務」を表す助動詞は must だったね。
で、この文を過去の文、つまり「しなければいけなかった」といいたいときはどうしたっけ?

え? ……あれ?? must には過去形がないって教わったような……??
そうなんだよ。助動詞の文は助動詞を過去形にすることで過去の文にできたわけだけど、助動詞の must はもともとが過去形で、過去形なのに過去のことを表さないから困ったわけだ。責任者出てこ~い! だな。

……。
で、ここからが今日のテーマだ。
じゃあ、「~しなければならなかった」はどういえばいいのか?
答えを先にいうと、
Hanako had to do it.
っていえばいいんだ。
なぜそうなるか?
「have to」は must と同じ意味を表す連語なんだ。
連語ってのは、「2語以上の単語がひとまとまりで、単語1語と同じように使われるもの」のことをいうんだ。
例えば、「~の前に」というのは in front of ~ っていうのはやったっけかな。
He stood in front of the door.
なら、「彼はドアの前に立った」だ。
He stood at the door.
(彼はドアのところに立った。)
とほぼ同じような意味になる。つまり、
in front of という3つの単語がひとかたまりで「~の前に」という意味を表す前置詞のような働きをしているわけだな。
こういうのを「連語」っていうんだ。
これはもう、理屈抜きにひとつひとつ覚えていくしかない。
連語には動詞の働きをするもの、副詞の働きをするもの、前置詞の働きをするもの……などなど、いろいろある。
で、今日は特に、助動詞の働きをする連語を覚えるよ。
「~しなければいけない」という意味を表す助動詞の must と同じ働きをする連語が have to だ。
ただし、must は「~に違いない」という意味もあったけど、 have to にはその意味はない。「~しなければいけない」という義務の意味だけだ。
同じように、
「~できる」の can は、be able to という連語で言い換えられる。
「~するつもり」「~するだろう」の will は、be going to で言い換えられる。
まずはこの3つを覚えようか。
3つとも、to の後は動詞の原形がくる。
I can drive a car.
= I'm able to drive a car.
(運転できる)
Could she sing well?
= Was she able to sing well?
(うまく歌えたか)
He must run. ⇒過去の文に
He had to run.
(走らなければいけなかった)
It will rain soon.
= It's going to rain soon.
(今にも雨が降り出しそうだ。)
……と、まあ、こんな感じだね。
be able to ~ と be going to ~ はbe動詞の文だけど、
have to ~ は、動詞が have だから、一般動詞の文として扱うよ。だから、疑問文、否定文は助動詞 do を使う。
Did they have to do it?
(彼らはそれをしなければいけなかったのか。)
で、注意しなければいけないのは、must not は「~してはいけない」という「禁止」の意味だったけど、
do not have to ~ は「~する必要はない」という意味になるってことだ。
They didn't have to do it.
(彼らはそれをする必要はなかった。)
have to ~ のおかげで、must ではいえなかった過去の文と「~する必要はない」という、意味の上での否定の両方がいえるようになるわけだ。
おかげで、must を使うより have to を使う機会のほうがほうが多いくらいだ。
これらの助動詞の代わりになる連語は、未来の文でもよく使われる。というのも、助動詞は2つつなげて使えないからなんだな。
will can という言い方はできない。だから「~できるだろう」と未来のことをいうときは、
will be able to ~ という。
will have to ~ も同様だね。「~しなければいけないだろう」。
ただ、be going to ~はそれ自体が will の代わりだから、will be going to ~ とはいわない。
ついでに、同じように助動詞的な働きをする連語をもう2つ覚えておこうか。
had better は「~したほうがいい」という意味を表し、動詞の原形が続く。
You had better go now.
(すぐに行ったほうがいい。)
……って俺たちは習ったんだけどね、ん十年前。これってアメリカ英語では喧嘩ふっかけているような強いニュアンスになるらしいので、実生活では使わないほうがいい。ただ、試験では今でもこれが出題されることがあるから、覚えてはおこうかね。
特に、否定の言い方で引っ掛け問題みたいに出題されることがある。否定は had better not +動詞の原形 の形だ。つまり had better 2語で1つの助動詞のように使うわけだ。
You had better go now.
(今すぐ行ったほうがいい。⇒さっさと行きやがれ)
You had better not go now.
(今は行かないほうがいい。)
さらには、否定疑問の形で、
Hadn’t you better ~?
(~したほうがよくない?)
という言い方もある。
Hadn’t you better go now?
(もう、行ったほうがいいんじゃないの?)
……どれも試験用の知識かもしれない。アメリカ人には使わないほうがいいよ。
「~したほうがいい」とアドバイスするときは、もっぱら助動詞の should を使ったほうがいい。should は辞書では「~すべき」って訳されているけど、実際には「~するといいよ~」っていう程度のニュアンス。
もう一つ、ややこしいのに need not というのがある。
これは助動詞として使うときはもっぱら否定形だけなんだ。意味は「~する必要がない」
do not have to ~ と同じような意味だね。
You don't have to do it.
= You need not do it.
(それをする必要はない。)
で、ややこしいのは、don't need to ~ という言い方もあるんだな。
You need not do it.
= You don't need to do it.
だから、試験ではよくこんな選択問題が出るね。
問題 次の( )に入る適当な語句はどれか?
They ( ) do it.
1. do not need
2. are not need
3. need not to
4. needn't
5. needed not
……で、まあ、上の問題の正解は 4 だね。
1 は、do not need to なら正しい。
2 は、be動詞は使わないからダメ。
3 は、to がなければ正しい。つまり、need not なら正しい。
need not の短縮形が needn't だから、4は正しい……という、二重に意地悪な問題だね。
5 は、didn't need to なら正しい。
こういうのって、いかにも受験英語っぽくて、俺はあまり好きじゃないんだよな。
なんか、意地悪問題というか、知識をテストするクイズ的な問題というか……「そこじゃないんだよ」っていいたくなるのよね。
大切なのは文の構造をしっかり理解しているかどうかで、need の使い方自体が、そのルールからしたらかなり例外的というか、わざと間違いを誘うような感じでさ。
こういういかにも「試験のための試験」みたいなのは、「大化の改新は西暦何年か?」というような問題と似ていて、あまり建設的ではないと思うんだよ。
……話がちょっと逸れたけれど、まあ、そういうことだな。
じゃあ、今回はこのへんにしておこうか。

……はい……。
今日のポイント:
- have to ~ は「~しなければいけない」(義務)の意味で、must とほぼ同じ意味を表す。
- have to ~ の否定は don't have to ~ で、「~しなくてもよい」の意味を表す。
- be able to ~ は「~できる」(可能)の意味で、can とほぼ同じ意味を表す。
- be going to ~は「~するところだ」「~になるだろう」という意味で、will とほぼ同じ意味を表す。
- need not ~は「~する必要がない」の意味を表す。助動詞としては否定形だけで使う。
- 「~しなければいけなかった」は、must ではいえないため、had to ~ で表す。
- had to ~ の否定は、動詞の have を否定するので、didn't have to ~ となる。
- 助動詞は2つ重ねて使えないため、未来の「可能」は will be able to ~、未来の「義務」は will have to ~ で表す。
- need to ~ は「~する必要がある」で、その否定形のdon't need to ~ は need not ~ とほぼ同じ意味になる。