人生の相対性理論(34)


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おわりに

 これが今の私が考える「人生の相対性理論」です。
 この本をまとめようと思ったのは、なによりも「自分のため」です。
 私は40歳直前の頃、鬱病になり、しばらく抗欝剤を飲みながら闘病していました。階段の上り下りの途中で身体が動かなくなり、そのまま小一時間立ち尽くす、といったひどい時期もありました。
 それを乗り越えたとき、心の中で「何か」が失なわれたことを感じました。
「心」という言い方が曖昧なら、脳の一部が壊死したのかな、といった感覚でしょうか。
 大切にしていた何か、信じていた何かが死んだと感じ、涙がボロボロと流れました。
 その喪失感はその後も「さみしさ」としてつきまといましたが、次第に慣れていき、再び日常生活が普通にできるようになっていきました。
 何かを失ったけれども、生きることが少し楽になったという感覚。「助かった!」という感覚。
 しかし同時に、「死ぬときは寂しいだろうな」という思いが、今も私の脳に強く張り付いています。
 最後の「死の相対化」という試みは、少しでも気楽に死んでいけるようにという、自分への処方箋です。
 人はみな必ず死にますが、どう死んでいくかはどう生きるかと表裏一体です。
 死を大仰に考えたくはありませんが、かといって、いい加減に生きていけるほど現世は甘くありません。
 毎日ひどいニュースが流れ、世の中はどんどん理不尽、不合理な世界になっていくように思えますが、過去においても同じだったのでしょう。
 つぶされないように生き抜くためには、目の前に現れる様々な理不尽さ、不合理さ、薄情さを、視点を変えて別のものに変換することが有効です。
 既存の宗教や、健康法だの金儲けだののハウツー本では得られない生き方の指針を、思考力がこれ以上弱ってしまう前にまとめておこうと思い、時間をかけてこの「人生の相対性理論」という、かなり無茶な思索をまとめました。
 基本的には自分のための備忘録であり、処方箋ですが、あなたの個性、あなたの「心」を殺さないで、あなたらしく残りの人生を生き抜くために、なんらかのヒントにしていただけたなら、無上の喜びです。
 ここまで長時間つき合っていただき、まことにありがとうございました。



編集子・いつき事務局・いつき: たくきセンセ、長時間の講演、ありがとうございました。
 この「人生の相対性理論」という講演は、2016年に数回に渡って行われたものを、2021年にまとめて、ここに公開したものです。
 たくきセンセは、1冊の本として出版したいと思っていたようですが、出版社が見つからないまま、時間が経過したため、ここにこういう形で公開させていただきました。
 森水学園第三分校の中に保存すると同時に、たくきセンセのnoteでも公開しています。
 面白かったと思われたかたは、ぜひSNSなどでシェアしてください。
 また、これをなんとか出版してみたいという出版社のかたもお待ちしております。

鐸の音流るる丘に 単行本(ソフトカバー)
 「銅鐸(どうたく)」の謎を寓話風に解き明かすファンタジー風の中編小説。1988年、たくきが33歳のときに執筆した幻の作品。日本という国がどのようにしてできていったのか……記紀が大陸からこの列島に渡ってきて原住民たちを支配した「利口の民」が作り上げた神話だとすれば、この物語は彼らに征服された日本原住民たちにとっての隠された神話か。幸福な生き方を追求した人たちと、不思議な神(?)との対話が現代人に教えてくれるものとは?   Amazonで購入で858円


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