人生の相対性理論(28)


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血液型人間学を楽しめない科学

 科学でこの世の森羅万象すべてを説明できるとする姿勢は、ともすると息苦しい生き方につながる気がします。
 例えば、私が「タヌキには人間が感じ取れない霊感のようなものが……」などと言おうものなら、「霊感の定義は?」「それを証明するデータは?」などと突っ込んでくる人がいます。
 定義できない、証明できないから面白いよね、というゆとりがないと、そこから先の会話はありません。

 宗教的・哲学的話題に入る前の枕として2つめに取り上げたいのは「似非科学」とか「トンデモ」といった言葉で片づけられている話題です。
 私は似非科学はきちんと否定する必要があるという立場ですが、「トンデモ」は、ものによっては結構好きです。
 例えば、「マイナスイオン効果」なるものを謳う家電製品や、酵母やバクテリアで放射能が消せるなどという話はとことん疑ってかかりますが、UFOやUMAの話は大好きですし、「血液型人間学」にも肯定的です。
 血液型と人の性格や体質との間に何らかの関係性があるという説を真っ向から否定する人たちは、自分たちは「科学的な思考」をしていると主張しますが、果たしてそうでしょうか。
 日本での血液型ブームを生んだのは能見正比古氏(1925 -1981)ですが、彼は学者ではなく、私と同業の文筆家でした。
 血液型と気質の相関関係を否定する人たちは、科学者でも医者でもない能見氏が行ったアンケート調査などには学問的な価値がない、有意性がないといいます。
 私は決してそうは思いませんが、仮に能見氏が用いたデータが欠陥だらけであったとしても、否定派の人たちは大きな見落としをしています。それは能見氏の人間観察能力の高さと文章家としての独創性です。
 彼は血液型と性格の関係を野菜にたとえて説明しました。
 人間の個性は血液型とは関係なく、生まれつきのものである。キャベツにはキャベツの個性、キュウリにはキュウリの個性がある。
 しかし、この「生まれつきの個性」が血液型という一種のフィルターを通ることによって、共通の気質がうっすらと加わる
 O型は生野菜。A型は漬物。B型は煮物、AB型は煮て漬けるから福神漬け。
 ニンジンは煮ても漬けてもニンジンであって、その個性は基本的には変わらない。でも、煮たり漬けたりすることで共通のフィルター的な気質が加わる。それが血液型による性格の色づけである……といった説明です。
 ……このたとえ話を読んだとき、この人はなんて自由で頭のいい人なんだろうと感心しました。
 ルールにとらわれず自由な発想をするのはB型の特徴とされますが、能見氏はまさにB型でした。
 私の経験では、B型の人たちは概ね血液型人間学には肯定的で、自分がB型であることも含め、人間観察を楽しんでいる傾向があるようです。(逆に否定派はO型に多いような気がしますが、ただでさえ反論が来そうな話題なのでやめておきます)
 血液型と気質の相関性については、統計学的な検証はもちろん意味があり、有意な結果も得られていると思いますが、なによりも自分の中から沸き上がる「ああ、分かる分かる」という共感や直感が否定できないのです。
 私は合理性を重視するといわれるAB型ですが、血液型人間学を頭から否定するのは非合理であると感じます。
 否定派は、血液型なんていう4種類しかないもので性格を決められてたまるか、差別思想につながるといいますが、能見氏はそんなことはまったくいっていません。頭のよしあしや性格のよしあしは血液型には関係のないことだと明言しています。
 どんな血液型にも善人もいれば悪人もいますし、天才もいればバカもいます。そんなことはあたりまえのことで議論の余地もありません。
 人種による気質や運動能力の違いを否定する人は少ないでしょう。かけっこの速い人はアフリカ系が多いですし、インドの美術には強烈な個性があります。北欧の人たちは暗くて悲観的なドラマを好んで見ますし、南方系の人たちは概ね大らかで時間やルールにルーズだったりします。
 多くの人たちは、それはそれで認めた上で、しかし人種によって人を差別してはいけない、傷つけてはいけないという認識を持っています。ですから、私としては「たかが血液型」の話をなぜムキになって否定するのか不思議なのです。
 猫の毛の色(真っ黒とか白黒とか茶虎とか)と性格に関係があるということを、多くの獣医さんは感じています。私はそれほど多くの猫とつき合ってきたわけではありませんが、それでも「茶虎は明るい性格で、人なつこい」といった定評には頷けます。
 血液型人間学も所詮そういう話にすぎないのに、人間のこととなると許せないというのは、とても息苦しく感じます。


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