「人間史」を見つめ直す(3)

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「縄文人」は単一種族ではない


イシモリ: ここでひとつ、多くの日本人が誤解していることを訂正しておく必要があるかな。
 それは「日本人の祖先」はどんな人たちだったのか、ということ。
 未だに「日本は世界的にも稀なる単一民族国家で、特別な国なのだ」なんて主張している人たちもいるけれど、これは明らかな間違いだね。

凡太: アイヌの人たちとかは、かなり純粋な縄文人の子孫ということは言えるんですか?

イシ: そうだね。それは間違いないだろうね。もちろん、この数千年でまったく他民族と混血しなかったということはないだろうけど。
 ちなみに「アイヌ」というのはアイヌ語で「人間」という意味だってことは知ってるよね?

凡太: はい、それは知ってます。

イシ: 縄文人はアイヌのことだ、なんてサラッと言っている人がいるけれど、それは間違いだね。アイヌは間違いなく縄文人だけれど、縄文人=アイヌではない。縄文時代、日本列島には多種多様な民族、というか、種族が生活していたわけだから。
 それと、アイヌに関しては、北海道にいた種族だろうと思い込んでいる人も多いけれど、実際には琉球の人たちとの共通点が多い。だから、縄文人のルーツは南方じゃないかと考える学者もいる。
 インド、スリランカにいたドラヴィダ族という種族がアーリア人に追われて、一部はオーストラリアに行き、残りはフィリピン、台湾、琉球経由で九州に入って、列島を縦断する形で北に進んでいった、という学説。
 面白いだろ? まあ、そのへんは分からないことだらけだね。

凡太: 分からないことは分からない……ですか。

イシ: 分かっていることから想像を広げたり、推定したりすることが大切だってことだよ。その結論が100%正しいなんてことは言えない。でも、可能性があることに関してはどんどん思考を広げていく。歴史を学ぶ上での楽しみ方かな。
 東京大学で古代史を学んだ田中勝也という人は、縄文時代の日本列島には、アイヌの他に、ハヤト、クマビト、ツチグモ……などなど、様々な種族が混在していたと主張していた。

凡太: ハヤトはなんとなく聞いたことがありますけど、他はなんだか……ツチグモなんて、虫の名前かよ? って思っちゃいますね。

イシ: 詳しく述べていると長くなるからやめておくけど、ざっと言うと……、

……と、そんな感じかな。
 ちなみにツチグモというのはほんとに虫の蜘蛛のことで、大和朝廷がつけた蔑称だね。大和朝廷のことはこの後述べるけれど、彼らにとって抵抗してくる原住民たちには、ことごとく虫とか獣とかに因んだ蔑称をつけていたんだ。
 エミシとかクマソもそうだけど、他にも、東方の種族だと、ミシハセ、エゾ、エミシ、サヘキ、クズ、ヤツカハギ、アソベ、ツボケ。西方の種族にはハヤト、クマビト、クマソ、ツチグモ、ミミダレ……なんて蔑称をつけていたようだね。
 かつて、大阪商工会議所の会頭だった某酒造メーカーの社長が「東北は熊襲の産地で文化的程度も極めて低い」なんて馬鹿なことを言って、不買運動が起きた事件(1988年2月)があったけれど、なんとも愚かな認識だね。

凡太: そんなことがあったんですか?

イシ: 有名な事件だよ。ネットで「東北熊襲発言」を検索すればすぐ出てくるよ。
 ちょっと脱線したけれど、とにかく、現在の日本人が様々な民族の混血の末に形成されているということは明らかだ。
 ただ、どの時期にどんな民族、種族がいて、それらがどのように混血していったのかは、正確には分からない。
 大まかには、もともと日本列島にいた種族は古モンゴロイド系が中心で、体毛が濃くて、比較的手足が長い人種。その典型がアイヌかな。その後、大陸から渡ってきた新モンゴロイド系の人たちは北方アジアがルーツなので、寒さに耐えるために胴長で手足が短く、目の凹みが浅くて鼻も低い、いわゆる一重まぶたでのっぺりした顔。この異質な人種が混ざり合って今の日本人を形成している、と考えればいいんじゃないかな。
 今でも東と西では文化や気質だけでなく、血液型分布や話し言葉も違う。
 今の日本人は一大混血民族なんだという大前提の認識が大切だね。

凡太: ブレンドコーヒーみたいなものですね。

イシ: そうそう。ブレンドはダメとかいうんじゃなくて、ブレンドならではの強さや柔軟性が強みだ、と、自信を持っていいんじゃないかな。  

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