31 前置詞 練習問題



郷センセ  前置詞の問題も、選択問題みたいなのが多いけど、そういうのは嫌いだから、今までの復習もかねていつも通り英作文だよ。
解答例は、前置詞の使い方を意識した文になっているので、「へえ、こんな風にもいえるんだ」と、理解することが目的だ。

1. 彼には一緒に住んでくれる友達がいない。

2. 彼は夜遅く帰宅した。

3. 今夜のスーパームーンはここから見えますかね。

4. 日本では新学期は4月に始まる。(学期:school term)

5. その2台のクルマは形は似ているが大きさがまったく違う。

6. ご親切に心から感謝いたします。

7. ここはとても寒いのでコートを着たままご着席ください。

8. 彼は娘を説得して結婚させた。

9. 彼は新聞を読んでいる顔を一瞬上げて私の顔を見たが、そのまままた読み続けた。

10. 私たちはコーヒーを飲みながらそのことについて話し合った。

11. この金は社会福祉のために使うことになります。(社会福祉:social welfare)

答え

1. 彼には一緒に住んでくれる友達がいない。
He has no friend(s) to live with.
a new house to live in という言い方はやったけれど、あの in はなくても会話などでは十分通じそうだし、実際、in をつけない人のほうが多いかもしれない……知らんけど……。でも、この最後の with は絶対に必要だな。friend は live の目的語にはなりえないし、前置詞がなかったら意味も分からなくなるからね。


2. 彼は夜遅く帰宅した。
He came home late at night.
last night(昨夜)や this morning など、next、last、this などがつくと前置詞はつかないが、そうではない場合はこのように前置詞をつけた形でいう。the の有無にも注意。
early in the morning(朝早く)
late in the afternoon(午後遅く)
他に、
at noon(正午に)、at night(夜に)は the をつけない。


3. 今夜のスーパームーンはここから見えますかね。
Can we see the supermoon from here tonight?
here や there は副詞なので普通は前置詞をつけないが、「ここから」のように、はっきりと from の意味を与えたいときは from here のようにいう。
主語はもちろん I でもいい。


4. 日本では新学期は4月に始まる。
In Japan, the new school term starts in April.
「学期」は school term という。term は「期間」。semester という語もあるが、semester は通常は前期後期の2期制の場合に使う語。「新学期」は決まった学期だから a ではおかしい。
で、「4月に」だが、月や季節を表す前置詞は in 。
in April in Japan と in が2つ続くとうるさいので、in Japan は文頭に出してみた。


5. その2台のクルマは形は似ているが大きさがまったく違う。
The two cars are similar in shape, but quite different in size.
shape は「形」、size は「大きさ」。どちらもすでに日本語化している語だから説明不要だろう。
ここでは in という前置詞を使い、「似ている。形において」「違う。大きさにおいて」という、一種の分解表現にしている。
similar は「似ている」という形容詞(つづりに注意)。quite (まったく)は後ろの different(異なった) という形容詞を強調している副詞。


6. ご親切に心から感謝いたします。
Thank you very much for your kindness.
これはもう決まり文句。この for の感覚をしっかり摑むこと。


7. ここはとても寒いのでコートを着たままご着席ください。
It is so cold here that you may be seated with your coat on.
「とても…なので~」という so… that ~ の文。
so … that ~ の文にしなくても別にかまわない。so は「だから……」と、前の文を受けて次の文に続ける接続詞もあるので、
It's very cold here, so please be seated with your coat on.
などとしてもいい。
「着席する」は sit でもいいが、be seated という受動態的言い方もよくする。seat は「シルバーシート」のシート。「座席」という名詞の意味の他に、「着席させる」「席に着かせる」という他動詞もある。
問題は with your coat on という付帯状況の表現。
この with の使い方を覚えよう。
似た表現としていくつか例を挙げれば、

Don't talk with your mouth full.
(口に物を入れたまま喋るな。)

Hanako walked in the room with Tama in his hands.
(ハナコはタマを両手で抱えて部屋に入ってきた。)

He kept silent with his eyes closed.
(彼は目を閉じて黙ったままだった。)

Pochi went away with his tail between his legs.
(ポチは尻尾を巻いて逃げていった。←尻尾を脚の間に入れて)

with your coat on の最後の on も大事。with your coat だけだと、「コートを持って」の意味になりそう。


8. 彼は娘を説得して結婚させた。
He talked his daughter into marriage.
「説得する」「結婚させる」と、動詞を2度使わずとも、こんな風に into という前置詞1つで「そういう流れに持っていった」という感じが出せる。
marriage は「結婚」。動詞は marry 。
Please marry me.
(俺と結婚してください)

「(人)に無理矢理~させる」という動詞で force (人) to do というのもあったね。
He forced her to do it.
なら「無理矢理彼女にそうさせた」だが、これも前置詞 into を使って、
He forced her into doing it.
ということもできる。into という前置詞を使ったから do は動名詞 doing になっている。
まあ、英作文でここまで頑張ることはないけれど、英文解釈でこういう文が出てきても、into という前置詞に「ある種の状況に持ち込む」みたいな意味もあると知っていれば、理解が深まるはず。


9. 彼は新聞を読んでいる顔を一瞬上げて私の顔を見たが、そのまままた読み続けた。
He looked up from the newspaper for a moment and then kept on reading.
「読んでいる顔」で悩んだかもしれないね。これも read という動詞を使わずとも、from という前置詞1つで表せる。
「新聞から顔を上げた」だけで十分、そのとき新聞を読んでいたことは分かるから。
for a moment で「少しの間」。
I'll never forget you for a moment.
(一時だってきみのことは忘れないよ)

「しばらくの間」なら for a while 。
Let's take a rest for a while.
(ちょっと休みましょうか。)

It stopped raining for a while.
(しばらくの間、雨がやんだ。)

keep on ~ing は「~し続ける」。
go on ~ing ともいう。


10. 私たちはコーヒーを飲みながらそのことについて話し合った。
We talked about the matter over (a cup of) coffee.
matter は漠然と「事柄」「事案」というような意味。単純に about it でも問題ない。
それよりも、この文のハイライトは over だね。
「飲みながら」にこだわって drink とか使わなくても over という前置詞1つで表現できてしまう。
この over はなんとも英語的な表現なので、感覚的に覚えるしかない。
over a cup of tea (お茶を飲みながら)というフレーズごと覚えたほうがいいかもしれない。
ケーキもつけるなら、over tea and cakes だ。
over は実にいろいろな意味、ニュアンスを持つ言葉なので、「へえ~、こんな使い方もあるのかあ。面白いな~」と思うことが大切。
例えば、
Old people like to talk over old times.
(老人は昔のことを語りたがる。)

この over を about などとしてしまうと、なんだか深刻な感じ、というか、真面目な話をしている感じになってしまう。over だからフワッとした雰囲気が出せる。
わっかるかな~。わっかんね~だろな~、今はまだ。


11. この金は社会福祉のために使うことになります。(社会福祉:social welfare)
This money will go toward social welfare.
これはもっと分からないだろうねえ。
go toward は「~に向かって行く」という意味だけれど、this money という、人でも動物でもないものが主語になっていると、「~の方向で使われる」という意味になる。というか、この文ではそうとしか解釈できない。
もちろん、普通に、
This money will be used for social welfare.
でまったく問題ないし、英作文の問題ならそうしておけばいい、というか、そう答えるのが王道だし、出題者が期待しているのもそれ。
だから、これはあくまでも「こんな言い方もありえるのよ」という例として紹介した。英文解釈などでこういう文が出てきたとき、toward という前置詞が本来持っているニュアンスをどこまでくみ取れるか、ということだね。そういうのが「英語のセンス」なのよ。


外国人が日本語を学ぶときに助詞をよく間違えるのと同じで、日本人が英語の前置詞を自在に使いこなせるようになるのは至難の業だ。
だからこそ、常に意識して、少しでも英語の感覚を身につけようとする姿勢が大事だよ。


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