30 冠詞と代名詞の使い分け 練習問題



郷センセ  冠詞の問題って、選択問題みたいなのが多いけど、そういうのは嫌いだから、今までの復習もかねていつも通り英作文だよ。
解答例の文をよく見て、解説も理解してね。

1. 父が本を買ってくれた。その本は読んでみたらすごく面白かった。(後の文の主語を I、動詞をfind で)

2. ゴールキーパーは背中を思いきり蹴られた。(背中:back)

3. ハナコは自転車通学しているが、雨の日は父親にクルマで送り迎えしてもらう。

4. 庭には2羽ニワトリがいる。1羽はオスで、もう1羽はメスだ。

5. 俺は冬にはたいていスキーに行くんだが、この冬は行けなかったな。

6. カエルが好きな人もいれば、そうじゃない人もいる。

7. 私には15人の弟子がいる。できるやつもいればダメなやつもいるし、どっちともいえないのもいる。

8. 月の裏側の写真を見たことがあるかい?

9. 我々はこの5か月間ずっと頑張って作業してきているが、この事業を終えるにはもう5か月かかるだろう。(another を使って)


答え

1. 父が本を買ってくれた。その本は読んでみたらすごく面白かった。(後の文の主語を I、動詞をfind で)
Father bougnt me a book. I found it very interesting.
最初の文は典型的な SVOO。
My father bought a book for me. でもいい。このとき、その「本」はまだ特定されていない「1冊の本」だから、冠詞は a。
次の文は典型的な SVOC。
前の文で言及した「本」で、今度は特定できる「その本」だから、代名詞 it で受ける。


2. ゴールキーパーは背中を思いきり蹴られた。(背中:back)
The goalkeeper got a heavy kick on the back.
これは新しく出てきた文型。「彼の背中を蹴る」は、もちろん kick his back とも言えるのだが、kick him on the back (彼を蹴る──背中において)という 、一種の「分解表現」をすることが多い。
これは「蹴られた」のは背中であるというよりも「彼」(人)なのであって、その場所が「背中」だった……という発想だ。日本語ではあまりない表現なので、これも英語的表現、英語的発想として覚えておこう。

She slapped me hard on the face.
(彼女は私の顔を思いきりひっぱたいた)
※ slap:平手で叩く。(エレキベースで「ンペンペ」とひっぱたいて演奏するのを「スラップ奏法」「スラッピーベース」などというね。え? 知らないのか……)

Pochi kissed Hanako on the cheek.
(ポチはハナコの頬にキスをした)

この種の文では、身体の部位を表す名詞には his her my などではなく、the をつける。これは「なぜ?」なんて思わずに、理屈抜きで覚えてしまおう。
で、She slapped me hard on the face. の主語を I に代え、slap(ピシャッと叩く、平手打ちする) を動詞ではなく名詞で使えば、
I got a hard slap on the face.
(顔に強烈な平手打ちをくらった=ひっぱたかれた)
という受け身的な表現もできる。
解答例はこの形にした文。
I was slapped hard on the face. と受動態にするよりも、got a hard slap としたほうが軽くてスッキリした英文といえるかな。
goalkeeper はすでに特定のキーパーだから、the をつける。got a kick の kick(名詞) は「一発くらった」ということで a をつける。


3. ハナコは自転車通学しているが、雨の日は父親にクルマで送り迎えしてもらう。
Hanako goes to school by bike. But on rainy days, her father takes her to and from school by car.
「通学する」はもちろん go to school でいい。この school は特定の学校ではあるが、慣用句になっているので冠詞をつけなくていい。
go to work(仕事に行く)なども同じ。go home や stay home の home は名詞ではなく副詞なので、そもそも冠詞はつかない。ただし、at home(家で)という言い方はある。
「雨の日は」は、前置詞 on を使って on rainy days でいい。「父親に送り迎えしてもらう」は単純に「父親が送り迎えする」でいい。人をどこかへ連れていくという動詞は take 。「送り迎え」は「行き帰り」の意味だから to and from とすればよい。by bike(=bycycle)、by bus、by air(飛行機で)、by car など、交通手段を表す by の後には冠詞をつけない。by car は in his car などとしてもよい。


4. 庭には2羽ニワトリがいる。1羽はオスで、もう1羽はメスだ。
There are two chickens in the yard. One is a cock and the other is a hen.
「庭」は garden でもいいが、garden は植木や草花などがある感じなので、yard を使ってみた。yard のほうが「囲まれた土地」という感じで、あっさりした言い方。「2つ」のもののうちの1つは one 。「もう1つ」は the other 。ニワトリ(chicken)は、おんどりは cock、めんどりは hen という。male (オスの、男の)と female (メスの、女の)を使ってもいい。male、female は名詞も形容詞もある。
One is (a) male and the other is (a) female.


5. 俺は冬にはたいていスキーに行くんだが、この冬は行けなかったな。
I usually go skiing in winter, but couldn't this winter.
「冬に」「夏に」などは in winter、in summer と、a も the もつけない言い方をする。
this(この~)、next(次の~)、last(この前の~)などの語がつくと、前置詞もつけない。
but couldn't はもちろん、but I could not go skiing を省略している。


6. カエルが好きな人もいれば、そうじゃない人もいる。
Some (people) like frogs, and others don't.
形容詞的用法の不定詞の練習問題で、
No scecret is easy to keep.
(守るのが簡単な秘密などない)
Some secrets are hard to keep.
(守るのが難しい秘密もある)
……っていうのやっただろ? この、
Some secrets are hard to keep.
の some の使い方を思い出せばいい。「~なもの(人)もある」を「いくつか(何人か)は~だ」という風に考えるわけ。
で、この some に対して、「それ以外」は others というんだったね。

↑これだな。
some と others がすっと頭に浮かぶようになれば、英語的発想が脳に染み込み始めた証拠だ。


7. 私には15人の弟子がいる。できるやつもいればダメなやつもいるし、どっちともいえないのもいる。
I have fifteen pupils. Some are good, some are bad, and others are indifferent.
これも some と others を使った。some を2つに増やしたけどね。
「弟子」は student よりは pupil のほうがいい。pupil は学校の「生徒」という意味でも使えるけど、student は「学生」で、陶芸の弟子とか落語の弟子とか、そういうのにはまず使わない。
indifferent というのは「どっちつかずの」「可もなく不可もない」みたいな意味の形容詞。in というのも打ち消しを表す接頭辞(単語の頭につく un とか anti とか in とか)だ。in を取った different は「違う」「異なった」という意味だから、in がついて打ち消したら「違いが分からない」ってことになるね。
あまりいい意味では使わないね。
He made an indifferent decision.
なら、「(どちらにも)片寄らない決定をした」というようなことになるけれど、
He made a fair decision.
(公正な決定を下した)
というよりは、indifferent のほうは、スッキリした感じが欠ける印象かなあ。
「まあ、無難な決定だわね」「差し障りがない決断だな」……って感じかもね。


8. 月の裏側の写真を見たことがあるかい?
Have you ever seen the picture of the other side of the moon?
現在完了「経験」の疑問文だね。「月の裏側の写真」をどういえばいいか、ってことだけど、「~の写真」は
the picture of ~ といえばいいね。この場合 of ~ とついているから the をつけたほうがいい。
a picture of the moon でも間違いとはいえない。月の裏側の写真は何種類かあるだろうけれど、その中の1枚でも見たことがあるか? というようなニュアンスになるかな。
「裏側」は the other side という。表と裏の「2つ」あるうちの「もう一方」だから the other 。
「もう一方」「もう片方」の意味だから、「裏」だけでなく広く使えるね。
the other side of life (人生の見えない部分)
the other side of the question (問題の裏側=隠れた問題)
the other side of yourself (きみが気づいていない自分、隠している部分)

Suddenly a cat came from the other side of the street.
(突然、通りの反対側から一匹の猫がやってきた。)

The grass is always greener on the other side of the fence.
(塀の反対側の芝生は常にこちら側より青い ⇒ 隣の芝生は青い=他人の環境はよく見えがちだ、ということわざ)


9. 我々はこの5か月間ずっと頑張って作業してきているが、この事業を終えるにはもう5か月かかるだろう。
We have been working hard for five months, but it will take another five months to finish the project.
another は「別のもうひとつ」という意味を表す。
I don't like this one. Show me another.
(これは気に入らない。別のを見せてくれ)

この使い方の他に「(同じものを)もう1つ=one more」の意味も表す。
How about another cup of coffee?
(コーヒーをもう一杯いかが?)

上の解答例文は、接続詞 but を挟んで前後に分かれている2つの文だが、前の文は、現在完了進行形の文。
「この5か月(for five months)」「ずっと~し続けている(have been ~ing)」の形。
have worked だと作業は完了した感じだが、have been working と完了進行形になっているので、今もまだ作業が続いていると分かる。
後ろの文は will を使った未来の文。it takes+時間 で「(時間が)かかる」。
It will take five months ~.
なら、普通に「5か月かかるだろう」だが、この five months に another がついていることで、「今まですでに5か月作業してきたが、もう5か月(もう1セットの5か月)かかってしまうだろう」というニュアンスが伝わる。
最後の to finish the project は、いうまでもなく「目的」を表す副詞的用法の不定詞。


……とまあ、こういうのは例を挙げていったらキリがないね。
冠詞も代名詞も日本語にはない考え方が組み込まれているので、自在に使えるようになるには時間がかかる。焦ることはないけれど、常に意識して、少しでも英語の感覚を身につけようとする姿勢が大事だよ。


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