郷センセ:
今日も生徒は凡太か。
さてと、ここまでのところで、動詞の使い方とか時制とか文の構造といった、英文を組み立てる上での基本的な考え方やルールは大方伝えられたと思う。それが木の幹だとすれば、ここからは枝葉的なことを教えることが多くなるかな。
今までにもちょろちょろ出てきてはいるんだけど、サラッと流してきたようなことを、改めて根本的に考えてみよう、というアプローチ。
今日は不定詞、ってやつを説明するよ。

はい。
不定詞というのは「to+動詞の原形」という形のものをいう。
実は今までにも出てきてるんだよな。サラッと。
未来のことや、主語の意思を表すのに、助動詞の will を使う他、be going to ~ という言い方もある、って教えたよね。あの to の後には動詞の原形がくるわけだけど、この to+動詞の原形も、それだけを取り出せば「不定詞」っていえる。でも、そんな風に分解して考える必要はなくて、be going to ~ で「~するつもりだ」「~しそうだ」という意味の助動詞的連語だ、と覚えたほうが分かりやすいから、いちいち不定詞だとかって言葉は使わなかったわけ。
- have to ~(~しなければいけない)=should ~、must ~
- need to ~(~する必要がある)※否定の don't need to ~ は need not ~ と同じ
- be able to ~(~できる)= can ~
- be going to ~(~するつもりだ、~になるだろう)= will ~
↑このへんはみんなそうだね。
助動詞的連語として覚えてしまったほうが分かりやすい。
ここまではいいかな? 今までやってきたことだね。

はい。
不定詞の名詞的用法
で、連語として覚えたほうが早いということでいえば、「~したい」というのを want to+動詞の原形 で表すというのもそれに近いね。
I want to eat something.
(何か食べたい)
この to eat も不定詞なんだけど、これも want to ~ で「~したい」の意味の連語だ、みたいに覚えたほうがスッキリするから、いちいち動詞の want と不定詞の to eat を分けて説明するようなことはしなかった。
この手のもいっぱいあるね。
- want to ~(~したい)
- like to ~(~するのが好きだ)
- begin to ~(~し始める)= start to ~
- try to ~(~しようとする)
……みたいに、前の動詞と to を一緒にして(ひとかたまりで)覚えたほうが楽だ。
ただ、この want to ~ みたいな形の to ~は、強いていえば、
to ~が「
~すること」という
名詞のような意味になって、want の
目的語になっている……という解釈もできる。助動詞的連語として覚えてきた need to ~ なんかも同じだね。
need
to ~ =「
~すること」を必要とする⇒「~する必要がある」
want
to ~ =「
~すること」を欲する⇒「~したい」
like
to ~ =「
~すること」を好む⇒「~するのが好き」
begin
to ~ =「
~すること」を始める⇒「~し始める」
try
to ~ =「
~することを試してみる」⇒「~しようとする」
……という感じかな。
で、to ~ が「
~すること」という名詞的な意味を表すなら、普通に
文の主語や補語にもなるんじゃないか、と考えたくなるよね? ならない?

そう言われるまで考えてませんでしたけど……。
ボ~ッと聞いてちゃダメよ~。
「なる」んだよ、これが。
to+動詞の原形=「~すること」 という意味で名詞のかたまりとして扱えるんだな。
To study English is not difficult.
(英語を勉強することは難しいことじゃない)⇒文の主語
My hobby is to take pictures of 'komainu'.
(趣味は狛犬の写真を撮ることだ)⇒文の補語
これを「名詞的用法の不定詞」っていう。
これとほぼ同じなのが動名詞だな。
動名詞は、形は動詞の現在分詞と同じで「~ing」というやつだね。これも「~すること」っていう名詞の意味を表す。
動詞から派生した名詞だから動名詞、だ。
To study English is not difficult.
は、
Studying English is not difficult.
ともいえる。
これは簡単だね。

……はい……
It … to ~. 構文
ただ、不定詞が文の主語になるとき、あまり長い語句になると文が頭でっかちになってしまう。
To finish the work in three weeks is difficult.
(その仕事を3週間で終わらせるのは難しい)
↑
これはTo ~ 以下が文の主語になっている SVC の文だけど、「3週間でその仕事を終わらせること」という文の主語の部分が7語もあるのに、be動詞の後の補語は difficult 1語だけだ。バランスが悪いだろ。
こういうときは、To finish the work in three weeks という部分を It という代名詞で受けてしまい、
It is difficult to finish the work in three weeks.
という言い方にすると、主語と動詞がくっついて文のバランスがよくなる。
この It は、文の後ろについている to finish the work in three weeks 全体を1語でまとめているわけだけど、こういう it のことを「仮主語」なんていうんだ。で、この文型のことを「it…to~構文」なんて呼んだりもする。
文法用語は覚えなくてもいいけど、この構文自体はよく使うから覚えないとダメだ。
ついでに、この to finish という「不定詞が表している動作の主体となるもの」を for … という形で不定詞の前に入れることもできる。
It is difficult for us to finish the work in three weeks.
(我々にとって、その仕事を3週間で終わらせるのは難しい。)
この for us を、不定詞の「意味上の主語」なんて言ったりするんだけど、まあ、こんな文法用語も特に覚えなくてもいい。
実際にこの構文を自分で自在に使えるようになればそれでいいのよ。
そうそう。初対面の人に向かって「はじめまして」と挨拶するとき、
Nice to meet you.
なんていうけど、あれも、
It is nice for me to meet you.
(私にとってあなたに会えたことは nice だ)
というIt … to ~. の文を省略した形といえるね。

え~? そうだったんすか~。
不定詞と動名詞
まあ、知らなくて当然だし、別に知らなくていいけど……。
さてと、ここでもう一つ注意したいのは、
不定詞が動詞の目的語になるときだ。
動詞には、動名詞を目的語にとる動詞と不定詞を目的語にとる動詞があるんだな。
どっちでもいいわけじゃない。
「~したい」は want to ~ だけど、want ~ing とはいわない。
○ I want to eat something.
× I want
eating something.
逆に、動名詞を目的語にとり、不定詞はとらない動詞というのもある。
enjoy ~ing(~して楽しむ)
give up ~ing(~することを諦める)
finish ~ing(~し終える)
stop ~ing(~することをやめる)
……なんかがそう。
○ We enjoyed playing tennis.
× We enjoyed
to play tennis.
目的語に不定詞をとるか動名詞をとるか、なんていちいち考えているよりも、
want to ~ で「~したい」
finish ~ing で「~し終える」
……というように、to ~ や ~ing 込みで覚えたほうが早い。
数からいうと、動名詞を目的語にとる動詞のほうが少ないから、そっちを注意して覚えておけばいい。
具体的には、
- mind ~ing(~することを気にする、面倒だと思う)※もっぱら疑問文、否定文で使う
- enjoy ~ing(~して楽しむ)
- give up ~ing(~することを諦める)
- admit ~ing(~することを認める)
- finish ~ing(~し終える)
- escape ~ing(~することを逃れる)
- postpone(put off) ~ing(~するのを延期する)
- stop ~ing(~するのをやめる)
- deny ~ing(~することを否定する)
- avoid ~ing(~することを避ける)
……っていう10個の動詞があって、頭文字をとって「メガフェプスだ」なんて覚える人もいる。
俺はそんなアホみたいな覚え方は推奨しない。普通に使うのは、
enjoy ~ing(~して楽しむ)
give up ~ing(~することを諦める)
finish ~ing(~し終える)
stop ~ing(~するのをやめる)
……くらいだし、
mind ~ing っていうのはもっぱら、
Do you mind my smoking here?
(ここで喫煙してもかまいませんかね?)
No, I don't mind.
(ええ、かまいませんよ)
といった疑問文や否定文で使うから、ちょっと特殊。
というわけで、不定詞の名詞的用法で面倒くさいことはあまりないかな。
長くなりそうだから、今日はここまでにしておくよ。
次回も不定詞の続きだ。

……はい……
今日のポイント
- to+動詞の原形 を「不定詞」という。
- 不定詞は「~すること」という名詞の意味を表し、主語、補語、目的語などとして使うことがある。これを「不定詞の名詞的用法」という。
- 名詞的用法の不定詞が長い語句で文の主語になるときは、to ~以下をit という「仮主語」で受けて、It is …… to ~.という文型にすることがよくある。
- 名詞的用法の不定詞は動名詞とほぼ同じ働きをする。
- ただし、動詞の目的語になるときは、動詞によって不定詞を目的語にとる動詞と動名詞を目的語にとる動詞があるので注意が必要。