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16. 過去の文(1) 助動詞を過去にすれば過去の文になる

Pochi can run fast.
(ポチは速く走れる。)

Pochi could run fast last year.
(ポチは去年は速く走れた。)


郷センセ郷センセ:  今日も生徒は凡太か。今日はとても簡単なルールを教えるよ。でも、ルールは簡単なんだけど、覚えることはいっぱいあるんだよな。

やるのは「過去の文」だ。
「ポチは速く走れる」を英語ではどういう? いちばん最初にやった文だよな。
凡太 Pochi can run fast.
です。

そだね~。タマは速く走れないけど、ポチは走れる……と。
じゃあ、「ポチは去年は速く走れた」はどういえばいいか、っていうのを今日はやるのよ。
「過去の文」だね。
ルールはチョー簡単だ。



……これだけ。
簡単だろ?
めっちゃ簡単なのよ、過去の文ってのは。

で、すでに教えた大原則として、

……というのがあるから、助動詞を過去形にした過去の文の動詞もまた、原形のままだよね。
だから、助動詞がある文は助動詞を過去形にするだけで過去の文になる。
ほんとこれだけのことなのよ。なんにも難しいことはない。
ただね、面倒なのはその「過去形」を覚えなくちゃいけない、ってことなんだな。
助動詞の過去形はこうなるよ。

  • do/does ⇒ did
  • can ⇒ could
  • will ⇒ would
  • may ⇒ might
凡太 頭の文字だけは同じなんですね。
あれ? must や should の過去形は?

うん、いいところに気がついたねえ。
実は must や should はもともと過去形なんだ。must は14世紀頃に現在形が消えてしまって、過去形の must だけが生き残って現在の意味を表すという逆転現象が起きたといわれている。should も過去形なんだけど、「~すべき、したほうがいい」という意味では時制に関係なく使われるようになった。
……まあ、そんな歴史的なことはどうでもいい。じゃあ、「~しなければいけなかった」とか「~に違いなかった」というのはどういえばいいのか、ってことになるけど、それは後でやるから、今はまず could と、疑問文・否定文を作る do の過去形の did だけでいい。would や might は今は考えなくていい。
楽だね~。can の過去形は could、do の過去形は did っていうのだけをまずは覚えればいいんだから。

じゃあ、さっそくやってみようか。
「ポチは去年は速く走れた」は?
凡太 Pochi could run fast last year.


そだね~。 去年は速く走れていたのに、今は歳を取ってヨレヨレなんだねえ。なにせ17歳だからなあ。ポチ、長生きしてほしいね。
で、それはそうと、
Pochi can run fast. の can を過去形の could にするだけで過去の文になるわけだ。
「去年」は last year、「来年」は next year、「今年」は this year だね。last~ や next~、 this~ には in とかはつかないよ。
じゃあ、それを否定文にしてみよう。
「ポチは速く走れなかった」なら?
凡太 Pochi could not run fast.
……ですか?

そうだね。助動詞の後ろに not だ。で、cannot は1語で書くけど、could not は分けて書く。短縮形は couldn't だ。
簡単だな。
じゃあ、簡単ついでにもう一丁。
「ハナコは昨夜はよく眠れなかった」は?
凡太 Hanako could not sleep well last night.

そだね~。簡単だろ。
じゃあ、「ハナコは昨日は学校に行かなかったよ」は?
凡太 「ハナコは今日は学校に行かない」なら、
Hanako doesn't go to school today.
だから、その doesn't を過去形にすればいいですよね?
Hanako didn't go to school yesterday.
……ですか?

おお~! すげ~な。その通り。
Hanako did not go to school yesterday.
did not の短縮形は didn't だってのも、ちゃんと予測がついたか。やるな~。
当然、「ハナコは昨日学校に行ったのか?」は?
凡太 Did Hanako go to school yesterday?

そうだよな。それをさらに否定にして、
「ハナコは昨日は学校に行かなかったのか?」なら?
凡太 Didn't Hanako go to school yesterday?

うん。簡単だな。助動詞を主語の前に置けば疑問文になる。……語順をしっかり分かっていれば、過去の文はチョー簡単なんだ。やっぱり語順は大事だな。

じゃあ、あんまり簡単だから、もう少し新しいことを教えるよ。

実は、助動詞 will には、もともと一人称の形で shall っていうのがあるんだ。
I will go to school tomorrow.
(明日は学校に行くよ)
というのは、
I shall go to school tomorrow.
って言ってもいい。
複数なら、
We shall go to school tomorrow.
だな。
今でもイギリスでは I shall ~.  We shall ~. って言う人は多い。でも、アメリカでは単に未来を表すだけなら、 shall はあまり使われない。いちいち will と使い分けるのは面倒だからね。
ただ、アメリカ、イギリスを問わず、shall を使うときってのがある。それは「意思を強調したい」ときだ。
We Shall Overcome っていう有名な歌があってね。日本では『勝利を我等に』っていうタイトルに訳されているんだけど、これはアメリカで生まれた歌だ。
100年以上前に、黒人の奴隷解放を訴えるチャールズ・ティンドリーという黒人の牧師さんが作った歌が元になってて、1960年代には人権運動や反戦歌としてフォーク系の歌手によって大ヒットしたんだな。俺は中学時代フォークソング部だったから、歌わされたなあ。
overcome というのは「打ち勝つ」という意味の動詞。困難に打ち勝って必ず勝利するぞ、という強い意思が shall という助動詞に込められているんだ。
つまり、will よりずっと強い意思を込めているのが shall なわけ。
You will die. っていうと「きみは死ぬだろう」って予測している文だけど、これを、
You shall die!
っていうと、「おまえを殺してやる!」「絶対に死なせてやる!」「死ねや~!」っていうような意味になる。
否定文にして、
I shall never forget!
なんていうと、「絶対忘れないからな! 覚えてろよ!」
っていう強い意思を表明する感じだな。never は not を強めた言い方だね。
「ネバーギブアップ」なんていうだろ。
Never give up!
は、
Don't give up.
よりずっと強い言い方で、慣用句になってるね。

もう一つは、Shall I ~? や Shall we ~? の形で、
「~しましょうか?」「~しませんか?」という提案や勧誘の意味を表すんだな。これもアメリカ、イギリス関係なく、普通に使うから覚えておこうな。
『Shall we ダンス?』っていう日本の映画がヒットしたのを、凡太は知らないか。平成8(1996)年公開だからなあ。凡太はまだ生まれてもいないもんなあ。
役所広司と草刈民代が主演でね。このタイトルになっている
Shall we dance?
は、「一緒にダンスしませんか?」という誘いの言葉だな。
Shall we play tennis? なら「テニスしないか?」だ。

I だと、
Shall I help you?
(手伝おうか?)
みたいな意味でよく使う。

What shall I do?
(何をしようか⇒どうすればいいんだ?)
っていうのも、困ったときに自問する感じでよく使うかな。

……覚えた?
凡太 I shall never forget.....

お~、なんかこえ~な。
うん、まあ……悪くないだろう……。

でね、この shall にも過去形があってね、
それがshould なんだな。
この should は、今ではもっぱら「~するべきだ」「~に違いない」という意味で使うね。つまり、must とほとんど同じ使い方だな。
must よりむしろ should のほうがよく使うかな。意味は must のほうが強い感じ。
You must not do it.(してはいけない=禁止)
You should not do it.(するべきではない=義務、当然)
というようなニュアンスかな。

You should remember this.
(これは覚えておくべきだぞ)
OK?
凡太 はい。

じゃあ、ついでに will の過去形 would の使い方もひとつ覚えておこうか。
Will you ~? は「~するの?」という未来の疑問文の他に「~してくれない?」という依頼の意味も表せたね。

Will you help me?(手伝ってくれない?)
Will you come?(来てくれない?)

この will を would に変えると、ていねいな言い方になるんだ。

Would you help me?
(手伝ってくださいませんか?)

Would you like some coffee?
(コーヒーはいかがでしょう?)

普通の会話の中でも Would you ~? はよく使うから、覚えておこうな。

もっとていねいに言う感じが、
Could you ~?
かな。

Could you help me?
(手伝っていただけないでしょうか?)

may の過去形 might も同じように、may をさらに婉曲的にいう感じでよく使うよ。

It might rain tomorrow.
(明日は雨が降るかもしれない。)
=It may rain tomorrow. とほぼ同じ意味だけど、may よりもさらに可能性は低い感じ。「多分降らないとは思うけど、もしかしたら雨ってこともあるかもしれないよ」……みたいな……。

It might be true.
(もしかすると本当かも=may be より可能性が低い感じ)

こんな風に、would 、could、might は、will、can、may をていねいに、さらに婉曲的に表現するという使い方もするんだ。

じゃあ、今日はここまでにしておこうかな。
凡太 はい。

今日のポイント:


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